篠塚興一郎著
母ちゃんのうた
心の豊かさ、優しさ、温かさ……
それらが生活苦の辛さを忘れさせてくれた。母の生きざまが、子供の心に残したたくさんの愛を、素朴な言葉に託してうたった母への賛歌。

【本文「野牡丹」より】
野牡丹の濃い紫が好きなのだけど
朝咲いて夕方には落ちてしまうので
いつ出会っても手折れずにいる

どうしてだろう
この花を見ると
きまって母を思い出してしまう
宵待つまでの黄昏のなかで
いつか母と見たかなしみがあるのだろうか

手折られるのをふせぐために
足音が近づいたら自ら花びらは落ちるという
いつ出会ってもそんな散り方をしていて

まだ美しいのに
実を守るために散ってゆく花が

ひたすらな母に似ている


【著者紹介】 篠塚興一郎(しのつか・こういちろう)
昭和15年7月1日宮崎県生まれ。宮崎県里親連合会理事。聖心ウルスラ学園短期大学非常勤講師。日本詩人クラブ会員。剣道場星雲館館長として30年にわたり、剣道を教えている。
▽四六判・並製
168頁

ISBN4-531-06363-5
初版発行 2001年8月


日本教文社刊

 

日本教文社トップページへ