◎神秘的合一の後にやってきた虚無の深淵。自己とともに神をも見失い、
著者は「魂の暗夜」のなかで神の力に翻弄されます。道なき道を歩み、
人間としての真の成熟に至るまでの稀有なるスピリチュアル・ジャーニー。
少女時代にカトリックの修道会で伝統的な観想修行を長年続けた著者は、その間に神との合一を体験し、その後、世俗に戻って平凡な主婦としての生活を送っていました。ところが中年になって突然、自己の消滅が起こります。以前は神と合一しても、そのことを認識する自己は残っていました。しかし、その自己がなくなると、当然、認識の対象としての神も消えてしまいます。聖なるものと一体化した至福の意識状態は、実はゴールではなく、さらなる道なき道への入り口だったのです。
自己も神も見失った「魂の暗夜」とよばれる虚無の深淵を、著者はどのように生き抜き、その魂はどのように変容し、その果てにどのような境地にたどり着いたのか? 中世スペインの神秘家、十字架の聖ヨハネをガイドに綴られた稀有な魂の記録です。
【著者紹介】
バーナデット・ロバーツ(Bernadette Roberts)
1931年生まれ。ロサンジェルスの敬虔なカトリックの家庭に育つ。
15歳でカルメル会修道会に入り、そこで約10年間を過ごした後、世俗社会に戻る。その後大学を卒業し、結婚し、4人の子供をもうけ、
各種学校の教師をはじめいくつかの仕事を経験するなどふつうの生活を送った後、1982年に自身の観想体験を綴ったThe Experience of
No-Self(邦訳『自己喪失の体験』紀伊国屋書店)を出版、伝統的なキリスト教観想の枠を超える非凡なものとして注目を集める。他に公刊さ
れたものとしては、その体験を「段階」を追って整理・叙述したThe Path to No-Self(本書)、意識の問題を主軸に、他宗教の変容体験に
ついての比較考察も含むWhat Is Self?(未訳)がある。ホームページに相当するものとしてBernadette’s Friendsがあり、未公刊だが有料で入手できる論文やDVDの情報も掲載されている。
【訳者紹介】
大野龍一(おおの・りゅういち) 1955年和歌山県生まれ。早稲田大学法学部卒。英国の精神科医アーサー・ガーダムの自伝『二つの世界を生きて』をきっかけに翻訳の仕事を始める。主な訳書に、J.クリシュナムルティ『人生をどう生きますか?』『生と出会う』『既知からの自由』、ドン・ミゲル・ルイス『パラダイス・リゲイン』、M.C.ネルソン『恐怖を超えて』(以上、コスモスライブラリー)などがある。現在、宮崎県延岡市で高校生対象の英語塾を営む。
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