その物語は一通のメールから始まった……
見知らぬ女性からの突然のメールを契機に主人公の心境が明るく変化していく様子を描いた表題作「こんなところに……」ほか、全25編を収めた、2003年刊『神を演じる人々』に続く短編小説集。
前作の短編小説集では、先端医療技術がもたらす生命倫理問題が主なテーマだったのに対し、今回は、言葉の力、善と悪、生命倫理、生物多様性など、現代人が直面するさまざまな問題を、小説、ショートショート、童話等の形で軽妙に描かれ、著者のイラスト9点も添えられている。
第1部「こんなところに……」は、表題作のほか、現代人にとって身近で日常的な出来事を題材とした作品が中心となっている。
第2部「ショートショートでひと休み」は、現れては消える謎の小虫、切られるのを嫌がるヒゲなど、さまざまなモチーフに基づく小品がカラフルにちりばめられている。
第3部「対話編」では、釈迦と悪魔、釈迦と行者、父と子など、2人の登場人物が、道徳、環境、生命倫理などを問答する内容となっている。
第4部「最後は童話風に……」では、ウサギやカメ、怪獣の人形、小さな男の子の視点を借りて見た世界が描かれており、普段の常識的な物の見方の外に立つ驚きと喜びを味わうことができる。
さまざまなテーマが多彩な表現方法によって描かれ、文章表現の面白味を味わいながら、現代の課題について深く考えさせられる1冊となっている。
第一部 こんなところに……
こんなところに……
手紙
出迎え
ボストン通りの店
飼育
宙のネズミ
第二部 ショートショートでひと休み
イミシン
剃り残し
新 蜘蛛の糸
恩返し
売り言葉、買い言葉
エラーメッセージ
アンビバレンス
第三部 対話編
釈迦と悪魔
釈迦と行者
ハエって悪い虫?
シカの肉
台湾ザル、追わざるか
サルの心、人間の心
ガイコツの踊り
第四部 最後は童話風に……
ウサギとカメ
ウサギの長老
カメの長老
ギャオの独り言
ぱすわあど